刀を鞘から抜いた瞬間に勝負が決まる。刀を抜く瞬間の動きと相手の急所を的確に切ることが勝負を決定する武道。これが居合です。
居合道、その起源は室町時代にまで遡ります。応仁の乱の際、いつでも刀を抜けるようにしていたというのが居合の始まりとされ、さらに戦国時代、居合道の始祖といわれている林崎甚助重信が、自ら編み出した刀術を居合道という武道として確立したといわれています。
以来、この武道は、その門人たちに受け継がれ様々な流派が誕生しました。
もともと無外流は、江戸時代中期に辻月丹資茂(つじげったんすけしげ)によって開かれた剣術の流派でした。辻月丹は当時、剣術に加え自鏡流居合の祖・多賀自鏡軒盛政から居合術を学んでいたことが記録に残っています。
今日の無外流居合は、初代 辻月丹資茂から数えて八代目にあたる高橋八助充亮とその実弟・秀蔵が、自鏡流五代の山村昌茂に居合を学んだのが端緒となり、創始されたものです。
その後、十一代 中川士龍先生により無外流居合兵道として体系付けられ、居合道の道統は十五代 塩川寶祥先生に引き継がれています。
無外流居合の特徴は、徹底的に華美を排したシンプルで極めて実践的な刀法にあります。十五代 塩川寶祥先生著の『無外流居合兵道 (1986年12月10日発行)』の序文に「居合の稽古には相手がいないために精神の緊張度が相手のある武技よりも、どうかすると遅緩しやすいので、修行 者は敵を前にした気持で、気分を充分に張りつめてやって貰いたいのである。そして理由をよく知って行なわないと、猿芝居の猿となるので、この点をよく注意 し、常に生と死との別れぎわを学ぶものであることを忘れてはいけない。」とあるように、その稽古の内容は、理合と体捌きを重視した対敵動作の習得に力点が 置かれています。